地方のカーディーラーが生き残るために必要なものとは?日刊自動車新聞シンポジウムで改めて得た視点

経営 自動車

「販売台数が年々減少している…」
「整備士が不足しており、入庫制限でお客さまに迷惑をかけている…」
「物価高騰で経営が圧迫されている…」

そんな厳しい状況に置かれている地方のカーディーラーも多いのではないでしょうか?

今回、日刊自動車新聞社様開催のシンポジウムに参加しました。

シンポジウムの概要はこちら
※日刊自動車新聞社のページへ遷移します

パネルディスカッションでは自動車販売会社5社が登壇され、正に地方のカーディーラーにとって必要な、今の自分たちの役割は一体なんなのか?ということを考えさせられる内容でした。

私自身、島根県という過疎化が進む地方でカーディーラーに勤めた後に独立をした身です。

何年も前から感じていた地方のカーディーラーの課題に対する想いが、このシンポジウムで聞けた内容が驚くほど合致していました。

その中で改めて地方のカーディーラーがこう変わっていくべきではないか?
と感じたことを書きます。

『ディーラー』というメリットと落とし穴

カーディーラーを経営する一番のメリット、それは『メーカーがいる』
ということです。

そしてその反対の落とし穴は『メーカーがいる』
ということです。

どういうこと?と思われるかもしれませんが、簡単に言うとメリットと落とし穴が表裏一体だということです。

ここで私の職歴をご紹介しますが

  1. フランチャイズ飲食チェーンでフリーターから店長へ
  2. 国産カーディーラー営業職
  3. 損害保険会社研修生
  4. 同級生と会社設立(公園の利活用事業)
  5. 研修とコンサルティング、保険代理店事業を2024年7月に独立

19歳から働いていますが、実は20年間ずっと『メーカーがいる』状態で仕事をしています。
保険会社も何か有形物を製造するわけではありませんが、メーカーと呼ばれることがあります。

メーカーがいることのメリット

①商品開発と製造

メーカーがいるメリットは多岐に渡りますが、『商品開発と製造』をしなくて済むことです。

カーディーラーは分かりやすく、車両はメーカーが開発し生産しているということを考えればイメージがつきやすいでしょう。

カーディーラーは『小売業』なので、

商品を仕入れて売る

ことがメインの仕事となります。こう言うと怒られるかもしれませんが、意外とシンプルなのです。

ただ私自身カーディーラーで営業していたので分かりますが、業務の幅や量はかなり多岐に渡ります。

フランチャイズ飲食店でもメニュー開発、保険代理店でも保険商品の開発は不要、ということは大きなメリットでしょう。

②土台のマーケティングが不要

メーカーが商品自体を開発、製造してくれるということがメリットなのは想像しやすいと思います。

私が感じる大きなメリットは、この『マーケティング』です。

マーケティングと聞くと様々な定義があり、色んな要素が浮かぶと思います。
ここでは簡単に『売れる仕組みづくり』としておきます。

私自身、現在もメーカーと関わって事業を行っていますが、その中で最近気が付いたことがありました。

マーケティングはメーカーがしてくれていた

ということです。

きっかけは、とある経営者からの紹介で、マーケティングに関する有料(30万円くらい)のセミナーに参加したことです。

営業職を長くやっており、セールススキルについては研鑽をしてきたつもりです。
その中でマーケティングという言葉は耳に入ってくることがあったのですが、広告を打つ、宣伝をすることくらいの認識でした。

ところが同級生と会社を立ち上げ、私が営業やオペレーション、集客を担っていたところ、同級生にはそのやり方が目からウロコなものばかりだったようです。

そこでたまたまマーケティングのセミナーに参加した際に言われたことが

「今まで当たり前にやっていたことじゃないか!」

と気が付いたのです。

マーケティングの手法について語りだすとキリがありませんので、一言でお伝えします。

顧客情報をいかに集め、活用するか

これがいかに重要で、今までどれだけメーカーのスキームに頼っていたのか、ということを痛感しました。

メーカーがいることの落とし穴

もうお分かりかもしれませんが、メーカーがいることの落とし穴、それは

メーカーに頼りっぱなしになること

です。私が感じるのは、特に前述したマーケティングです。

商品はメーカーが開発してくれるし、製造コストも掛からない。
さらには有名人を起用してTVCMも勝手に流してくれる。

簡単に言うと、看板を担ってくれているということです。
(むしろそれを使い倒すのが醍醐味ですが)

昔はそれで良かったのかもしれません。作れば売れる、黙っていてもお客さんが来る

現代はどうでしょうか?

人口が減少していくのに、地元を見るとカーディーラーも保険代理店もたくさんあります。
現在どちらも統廃合が進んでいるという現実を見れば分かりますが、今までと同じようにやっていける市場ではなくなっているのです。

メーカーに頼りっぱなしでは、この先特に地方ではやっていけるような状態ではないのです。

これが長年の間積み重ねてきた、メーカーへの依存(自覚がない可能性大)による落とし穴だと感じます。

地方のカーディーラーはマーケティングを知る必要がある

前述したマーケティングのセミナーに参加して、もう一つ驚いたことがあります。

『医療業界の参加者が多い』

ということです。特に歯科が多いような気がします。

今となっては浅はかな思考だったと感じますが、医療業界なんて儲かって仕方ないのではないか?と思っていました。

しかしよく考えると、これから日本の保険診療報酬が上がっていくとは思えませんよね。

そこでいかに自由診療を患者に選択してもらえるか?という点が正に医療の分野でもマーケティングの観点が必要なのです。

これが先ほどのカーディーラーではマーケティングを考える必要がない、という落とし穴に繋がります。

メーカーが車を作って、販売店はただ売ればいい、という時代ではないということです。

シンポジウムのパネルディスカッションでもたびたび取り上げられましたが、いかにカーディーラーが独自性を見出し、ブランディングをしていくか、これが大きなカギとなります。

私はその中で、マーケティングというものが大きなキーワードになると確信しています。

メーカーが用意する施策だけではなく、自社にとって、さらに言うと自社がある地元にとって必要なマーケティングを知るべきなのです。

これにいち早く気が付いている自動車販売会社は、マーケティングから新規事業の可能性を探り、多角的に経営をしています。

気が付いていない? カーディーラーの大きな可能性

私は元々、ファイナンシャルプランナーで独立をしたい、と考えていました。

その想いが強くあったため、カーディーラーに在籍しながらファイナンシャルプランニング技能士2級を取得、上級のCFPという資格にも一部合格するところまで至りました。

そこで以前から思っていたのが

「こんなにたくさん顧客がいるなら、この人たちにFP相談や生命保険の話までできたらいいのに。」

ということでした。

そうなんです、シンポジウムでも言われて改めてやはりそうだな、と思いましたが

カーディーラーには情報が詰まった顧客

がたくさんいるのです。
シンプルに、自動車販売をしているから自動車保険も一緒に売れたらいいな、のレベルではないのです。

なのに地方のカーディーラーの業務に目を向けると

メーカーに求められる数字を追うのに精一杯

になっている現状が多々見受けられます。
もちろん本業であり、カーディーラーはメーカーとタッグを組んでお客さまを守る必要があります。

しかし私が経営を始めて驚いたのが

カーディーラーの営業利益率の低さ

でした。いつも目標数値への達成に奔走して躍起になっている、忙しい、やることが多い、人が足りない。
それでこの営業利益率なのか…と。

小売業である、と考えれば確かにそれくらいの営業利益率なのかもしれません。

しかし先に仕入れを起こすことが多い業種でもありますので、個人的にはキャッシュフローは一体どうなっているのだろうか…と気になってしまいます。

営業職時代に、時期が来ると売掛金の回収を叫んでいた、経営陣と経理の担当者の想いが今になってひしひしと伝わります。

話が逸れてしまいましたが、カーディーラーには新規事業を行うために必要な材料が揃っているということです。

  • 店舗運営のノウハウがある
  • 接客スキル、顧客対応力、顧客フォローの仕組みがある
  • 家族や勤務先など、濃い顧客情報を持っている

など、挙げればまだキリがありません。

こういうと決まって

「ディーラー業でも人手が足りないのに、新規事業なんてもっての外だ!」

という経営者の方もいらっしゃると思います。その時点でかなり危険な思考だと私は感じます。

先ほどカーディーラーの営業利益率の低さを取り上げましたが、

  • 営業利益率が確保できる事業を行う
  • 人材の流動性を考える

この2点がイメージできないので、目の前のカーディーラーの仕事だけで一杯になってしまうのではないかと。

そして一昔前は、メーカー側としても多角化よりも自社の自動車を売って欲しい、と思っていたでしょう。

これは私の個人的な感覚ですが

経営主体として利益が出る体制を作り、存続してほしい

今ではこちらに変わっていると思います。
これが分からない経営者だと、これから先はかなり厳しいものになると思います。

前述したように、気が付いている自動車販売店は、もう結構前から対策して動いています。

かく言う私もカーディーラーと保険代理店の仕組みを知った上でこの先を考えたからこそ、利益率の高い研修とコンサルティングの会社を設立したのです。

ノウハウやスキルはあっても、独立したてで顧客がいないというのが最大の課題で、集客に必死になっています。

カーディーラーは、既に目の前に超優良な顧客情報が山ほどあるので、うらやましい限りです。

立ち止まっていたら身を滅ぼす。変化と行動が必要!

色々と書きましたが、今回のシンポジウムで販売会社の方々の新規事業についてたくさん聞けたからこそ思ったことです。

カーディーラーに勤めている頃から「もっとこうすればいいのに」と思うことがたくさんありました。

だから現在は独立してカーディーラーに向けて研修やコンサルティングを行っています。

シンポジウムに登壇された販売会社の方々は、地方でありながらも果敢に新規事業に取り組んでおられました。

まるで起業家のビジネスピッチを聞いているかのような、心が躍る内容で時間があっという間に過ぎ去りました。

それと同時に、やはりカーディーラーにはまだまだこれから可能性がある!と確信を持った次第です。

しかし、100年に一度と言われるくらいの変革期が自動車業界には訪れています。

今行動しなくて、これから先10年、20年後にこのままやっていけるとは到底思えません。

自動車業界に限った話ではありませんが、立ち止まっていたら身が滅びる速度は上がりました。

地元の島根県を中心に、地方のカーディーラーが変化し成長を続けられるよう、研修とコンサルティングで支えていきたいと改めて決意が固まった素晴らしいシンポジウムでした。

弊社への研修、コンサルティングのお問い合わせはこちらから
https://atae.co.jp/information/



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