1. はじめに:研修担当者の“あるある”迷子
社長から
「我が社は心理的安全性とエンゲージメントが足りない!対策になる研修を探してくれ。」
と言われた。こんな無茶振り、経験ありませんか?
言われてからネットで検索しても似たようなプログラムばかり、費用は“要問い合わせ”。
期限だけは迫り、結局 “知名度が高そう” な研修を申し込む。
言われて探したものの、いざ社長に打診すると
「で、どれだけ効果があるんだ?」
と聞かれ言葉に詰まる。とりあえず何となくの数値を出して、やっとの思いで稟議が通る。
ところが研修実施の当日、現場からは
「で、これは私たちに何の役に立つんですか?」
の大合唱。レポートも形だけ、数ヶ月後には何も変わらず――。
もし心当たりがあるなら、原因は**「自社の本当の課題が見えていない」**ことにあります
2. 効果が出ない研修に共通する3つの落とし穴

2-1. 流行ワード依存症
モチベーション向上、組織開発、リスキリング。バズワードは便利ですが、 課題を特定せずに飛びつくとズレが生まれます。
ある営業会社の例 「心理的安全性」を掲げた研修を実施 → 実際に必要だったのは“顧客ヒアリング手法”だったため売上は微動だにせず。
そもそも言葉の意味すら分からないまま、何となく聞きなじみのある、それっぽいキーワードにつられてしまう。
2-2. ネット検索の迷宮
検索上位=自社に最適とは限りません。
ゴールが決まっていないまま探しているので、どれも “ピンと来ない” のは当然です。
最低でも、○○を解決したい、と言葉にできていないまま探し始めるのは危険です。
モチベーション向上が目的ではなく、ある問題の解決のためにモチベーション向上が必要だ、が見えていないと、ネットで検索する時間ばかり掛かってしまいます。
2-3. “決裁優先”で社長が納得しそうなものを選んでいる
これはどうしても避けて通れない部分かもしれません。しかし社長が満足するものを実施しても仕方ありません。
何度も言うように、自社の課題が何で、何のために研修を実施するのか?が明確になっていないと、時間と費用が無駄になってしまいます。
3. 現場が白ける理由は「目的の空白」

現場は「成果と直結しない活動」に敏感です。
「なぜこの研修なのか?」を説明できない=目的が空白。
結果、
- 受講姿勢が受け身
- レポートが無難な感想文
- 上層部も評価不能
という三重苦に陥ります。
あんなに悩んで、探して、稟議を通したのに、現場からこんなことを言われるなんてーー
研修の担当者は、常に板挟みです。本当は受講する現場から、
「今回の研修を受けて良かった。明日からこれを実践するとこんな効果が出ると思う。」
と言ってもらえて、かつ成果が出ることが研修担当者の本来の仕事の姿です。
4.数字で語れる研修設計:目的・目標・差分フレーム

研修の成果を“感覚”ではなく“数字”で語るためには、
「目的」「目標」「差分」の3つを押さえることが重要です。
これは、経営層にも現場にも納得してもらえる“共通言語”になります。
① 目的(Why)── なぜこの研修をするのか?
「目的」は、単なるテーマ設定ではなく、
経営上の戦略や現場課題との紐づけが重要です。
例:「離職率が高い → 若手社員の育成体制に課題がある」
「新規提案が伸びない → 顧客ニーズのヒアリングが甘い」
② 目標(What)── どの指標をどう改善したいのか?
この研修でどんな成果を出したいのかを数値で明確にします。
KPI(行動目標)やKGI(成果目標)などの設定によって、後から効果検証がしやすくなります。
- 新規案件獲得率を+15%
- 離職率を▲5pt
- 顧客満足度を8.0→9.0へ上昇
③ 差分(Gap)── 今と目標の“ギャップ”を可視化する
「目標」と「現在」の間にある“差”を確認し、
どこにボトルネックがあるのか、どの行動を変えるべきかを把握します。
- 現場スタッフや管理職へのヒアリング
- 離職率や売上などの業績データ
- アンケートやスコアシートによる簡易分析
これらを通じて、具体的な課題を洗い出すことが、この段階のゴールです。
この3つを押さえておけば、
「なぜこの研修なのか」「何が改善されるのか」が社内で共有されやすくなり、
費用対効果や現場の納得感にもつながります。
5.まず取り組むべき3ステップ課題ヒアリング
ステップ | 主な質問例 | ゴール |
① 現場ヒアリング | 「業務で一番困っていることは?」 | 顕在課題を洗い出す |
② 管理職インタビュー | 「部下が成長する障壁は?」 | 潜在課題を浮き彫りに |
③ データ確認 | 売上推移・離職率・顧客満足度 | 客観指標で裏付け |
✍️ポイントメモ
- 専門用語より具体事例で聴く
- 数字と感情の両面を集める
このプロセスを踏むだけで 「研修が本当に必要か」「OJTで足りるか」が見えます。
研修会社の身でこう言ってしまうのもなんですが、OJTで解決できるものは、OJTで解決した方が費用も抑えられますし、育成担当者のレベルアップや社内の共通言語や文化の醸成にも繋がります。
社長に言われたからとりあえず外部研修、がベストではないのです。
6.まとめ:研修は「選ぶ」前に「問う」もの

- 流行語→検索→曖昧な稟議通過の順では、成果は期待できない
- まず目的・目標・差分を定める
- 課題ヒアリングで現場と経営の視点を接続する
弊社では主にコミュニケーションスキルについての研修を実施しています。
現場が心理的安全性を感じ、意見を言いやすい環境になったとしても、管理職側に「受け止め」マインドがない限り、業務改善は図られません。
管理職の受け止めマインドが身についた上で、現場の報連相の力が身につく、必要な情報は何か分かり、優先度の高い報連相が実勢できるようになる。
だから本当に改善すべき行動に直結する。そんな研修を行います。
そのために研修担当者や経営陣、現場に徹底したヒアリングを行います。
「何を受けるか」より 「何のために受けるか」――。
研修担当者のあなたが最初に投げかけるべき問いは、まさにそこにあります。
もう稟議で悩む、現場から強く当たられるのはやめましょう。
まずはお気軽にご相談ください。